先日,救急外来に風邪で咳が長引いており,炎症マーカーが高いから精査して欲しいとのことで近くの開業医から紹介された患者がやってきました.普通であれば,症状のある部位しかCT検査は行われないことが多いです.しかし,今回,私は少し迷った末,「思いもよらぬものが見つかる可能性もゼロじゃないかもしれないから胸だけでなく,骨盤部までCTを撮っておこう」と決断し,胸部CTではなく胸腹部骨盤CTをオーダーしました.
結果的には懸念された肺炎は認められずに安心した一方で,思いもよらぬものが骨盤部のCTで見つかりました.それが総腸骨動脈瘤です.直径4センチもありました.
本当であれば3センチを超えたレベルで手術適応です.この患者さんは何年も前に小さい動脈瘤があると指摘されたことは覚えていたようですが,特に経過観察はされていなかったようです.それが今回,破裂してもおかしくないサイズでたまたま発見されました.
私はすぐに心臓血管外科への紹介状を作成し,帰宅させました.近い将来,手術での治療が行われることでしょう.
もし私が,今回,胸部CTしかオーダーしていなかった場合は動脈瘤は見つからず,この患者さんはいずれ動脈瘤が破裂して急逝していた可能性があります.
このように,何気ない風邪のような患者さんを診療する場合にも,思いがけず,その人の運命を左右するような決断が水面下で行われているのが医療の世界なのだと改めて痛感させられた出来事でした.
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