車のスペック表を見ていると気になるのが馬力やトルクの数値です．
これらはどう違うのでしょうか．
トルクとは？
エンジンが発生する回転力の強さを示す数値です．単位はkgf・mもしくはN・mが使用されます．
馬力とは？
馬力とは別名パワー，出力とも言われます．エンジン回転数×トルクで求められる数値です．単位はkwやPSが使用されます．
ディーゼルエンジン，ガソリンエンジンの違いによる特性は？
一般にディーゼルエンジンは低回転域からトルクが豊富ですが，回転数を上げると破損してしまうため，エンジン回転は4000-5000rpmでレブリミットになってしまいます．一方，ガソリンエンジンはトルクはディーゼルエンジンより出しにくいですが，ディーゼルエンジンより高回転まで回すことが可能であるため，最高出力の面では優位になることが多いです．
ターボエンジンの立ち位置は？
基本的に自然吸気（NA）のガソリンエンジンではエンジンの排気量×0.1N・m程度が最大トルクの相場です．2000ccのNAガゾリンエンジンなら200N・m程度ですし，4000ccのNAガソリンエンジンなら400N・m程度が相場になります．ターボエンジンは強力なタービンを積むことでトルクを排気量あたり2倍程度まで高めることができます．つまり2Lのガソリンターボエンジンで400N・m程度を出すことが可能になります．トルクが太くなれは必然的に最高出力もNAエンジンよりも大きくなります．なお，ディーゼルエンジンはターボとの相性が抜群であるため，基本的にNAは存在せずターボエンジンが基本です．
パワー，トルクの違いによる実際の走行フィールの影響は？
上記のような解説は様々なサイトで読むことができます．肝心なのは実際にパワー，トルクが走行フィールにどのように影響を与えるかです．私は現在は大トルク，低出力，低回転型の2Lディーゼルエンジンを搭載するCLA200dに乗っています．4400rpmからレッドゾーンです．その前は低トルク，高出力，高回転型のトヨタ・セリカSS-Ⅱに乗っていました．こちらは1.8Lの自然吸気エンジンを搭載しています．こちらは7800rpmからレッドゾーンであり，かなりの高回転型エンジンです．
・CLA200dのスペック：車両重量1600kg，最高出力150PS(3400-4400rpm)，最大トルク320N・m（1400-3200rpm）
・セリカSS-Ⅱのスペック：車両重量1160kg，最高出力190PS(7600rpm)，最大トルク180N・m（6800rpm）
こうして並べてみると，圧倒的に軽くて最高出力の高いセリカの方がパワフルだと思う方も多いかと思います．私もCLA200dを契約した時，「どうせ150PSしか無いんだからセリカから乗り換えるとパワー不足感を感じるだろうなぁ」と予想していました．
しかし，この予想は全く裏切られました．
高回転型エンジンのセリカを運転していると，アクセルを踏み込んでも回転数の上昇音がうるさい割には速度の上昇が穏やかだという現象が起きます．（所謂低速トルクがスカスカというフィーリングです．）一方，CLA200dはアクセルを軽く踏み込んだだけでも，グッと力強く加速してくれます．つまり，2倍近く大きい最大トルクが1.5倍弱の車重の差を埋め合わせてなおゆとりのフィーリングを与えてくれていることに気がつきました．
街中でのちょっとした加速シーンはもちろん，高速道路への合流加速や高速道路上での追い越し加速時などでも豊かなトルクのディーゼルエンジンはアクセル操作に対して機敏に反応してくれるので苦しさを全く感じさせませんし，速度調整が楽です．
一方，レッドゾーンギリギリでシフトアップするベタ踏みでの最大加速を試すシーンになるとディーゼルエンジンは頭打ち感が強くなります．アクセルを踏み込んだ瞬間は力強くグッと前へでますが，アクセルを踏み続けて回転数が上がっていっても，得られる加速感は正直，並です．一方，セリカはCLA200dならレッドゾーンより遥かに上の6000rpmでハイカムに切り替わり，さらに加速感が伸びていきます．7800rpmのレッドゾーンに到達する頃にはかなりの加速感が得られますし，スポーツカーに乗っているというフィーリングが得られます．
しかし，セリカで7800rpmまで回すのは，高速の合流時などで「あえてエンジン音と最高出力を楽しむ」と決めこんだシーンのみです．街中のちょっとした加速では当然そこまで回すことは非現実的ですし，高速道路の追い越し時にも常にレッドゾーン近くで追い越し加速をするということはありません．そもそも，「加速したい」とドライバーが思いついてから「7800rpmに到達する」までに数秒のタイムラグが生じてしまいます．（私のセリカが4速ATだったからというのもあるかもしれませんが・・・．）
結局のところ，実用レベルの加速シーンではトルクの太いディーゼルエンジンの方が，よっぽどドライバーの加速したいという意思に対してタイムラグなく車両を加速させることができるのです．
このように，最高出力が最重視されるのは最高速アタックをするなど，アクセルベタ踏みの時間が長いシーンのみです．実用上はトルクの数値の方がよほどドライブフィール面で重要であると私は気づくことができました．
さて，ガソリンターボエンジンはこの両者の中間的な立ち位置のスペックになります．次回はこちらについて考察してみます．
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